2015年1月20日

リリース概要

大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの坂和洋一准教授・高部英明教授らの研究グループは、米国の大型レーザー「OMEGA」を使った米国・英国・日本8研究機関の国際共同研究で、宇宙の極限でしか実現しない秒速1千キロを越える対向する2つの超高速プラズマ流を生成し、磁場不安定性によって乱流磁場が作られて行く様子を実験で観測することに成功しました。これにより今後行われる世界最大のレーザー「NIF」(米国)を使った実験で、超新星爆発などで乱流磁場が生成されて衝撃波構造が作られ、その衝撃波による宇宙線の加速機構などがレーザーを使って実験室で研究できることを証明しました。本研究成果は、1月19日付け『Nature-Physics』誌に掲載されました。

研究の背景

重い恒星がその一生を終えるときにおきる超新星爆発では、秒速2千〜3千キロでプラズマが吹き出します。このプラズマの流れが宇宙空間に分布する薄いプラズマ中を伝わる時に、球状の衝撃波ができます。私達の銀河内では100~200年に1回程度超新星爆発が起こり、宇宙線はこの衝撃波で数千年かけて加速されて作られていると考えられています。しかし、衝撃波の物理機構や荷電粒子が加速されて宇宙線になる科学的根拠は観測からはわかりません。

大阪大学レーザーエネルギー学研究センターの高部教授らの理論グループは2008年に、2つの対向する高速のプラズマ流があれば、プラズマ中に磁気不安定が起こり、強い乱流磁場が発生し、この磁場の影響で衝撃波が作られることを計算機シミュレーションで示しました。この計算結果を実験で検証するために、実験グループの坂和准教授らは2010年に世界で1番大きな米国リバモア研究所のレーザー「国立点火施設(NIF)」を使った実験提案をし、採択されました。この実験に興味を持った、日本・米国・欧州の総勢30 名を超える研究者が国際共同研究に集まり、2010年秋から世界で2番に大きな米国ロチェスター大学の「OMEGA」レーザーを使った実験が開始されました。

本研究では、向かい合った2枚のターゲットに「OMEGA」レーザーを照射し、対向する2つの高速プラズマ流を生成しました。同時に別のターゲットにレーザーを当てて核融合反応をおこし、核反応で作られた高速の陽子をプラズマ中に通して、磁場の空間構造を測りました[図1]。その結果、プラズマ流の相互作用によって時間と共に磁気不安定が成長し、構造が大きくなりながら強くなる磁場が作られていく様子が明らかになりました。また、計算機シミュレーションと実験結果を比較したところ、衝撃波を作るためには「OMEGA」レーザーではエネルギーが不十分であり、「NIF」レーザーを使えば磁場乱流が衝撃波を作ることも明らかになりました。「NIF」レーザー実験は2014年の秋に開始され、今後、衝撃波の生成を詳しく観測します。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

宇宙線の存在が観測されてから100年以上たちます。宇宙線の生成には衝撃波が重要だと言うことは明らかになってきましたが、加速機構はよくわかっていません。今回の「OMEGA」レーザー実験で強い磁場が作られることが確認されたので、今後の「NIF」レーザー実験において磁場が乱流状態になり衝撃波が生成され、宇宙線加速の論争に実験的な判定を下しうることが明らかとなりました。

特記事項

1月19日付け『Nature-Physics』誌に掲載される論文は、21人の共著論文です(内、大阪大学研究者は3名)。8研究機関は、大阪大学とリバモア研、MITなど米国の6校、英国オックスフォード大学となっています。

【論文タイトル】Observation of magnetic field generation via the Weibel instability in interpenetrating plasma flows

参考図

図1 「OMEGA」実験のセットアップ
高出力レーザーを図の上下に設置された8mm間隔のプラスチックターゲットに照射することによって秒速1000kmで噴射するプラズマを作り、超新星爆発で作られる高速プラズマ流を模擬する。そこに、別のレーザーで核融合反応をおこし、生成された陽子を照射すると、対向プラズマ内に発生した磁場で曲げられ陽子が集まった所が黒く映る。この方法で強い磁場が生成されていることがわかった。

参考URL

研究室HP
http://www.ile.osaka-u.ac.jp/research/pnx/

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