2014年11月18日

本研究成果のポイント

■セロトニン受容体を欠損したマウスを用いて、運動後に海馬の神経細胞と抑うつ行動を解析
■セロトニン3受容体が、運動のもたらす抗うつ効果や海馬の神経細胞の新生に必須の役割を果たしていることが明らかに
■うつ病などの精神疾患の予防・改善や健康増進に貢献することに期待

リリース概要

大阪大学大学院医学系研究科解剖学講座(神経細胞生物学)近藤誠助教、島田昌一教授は、セロトニン3受容体が、運動のもたらす抗うつ効果や海馬の神経細胞の新生に重要な役割を果たしていることを明らかにしました。

運動は、脳の神経細胞や動物の情動・記憶に多くの有益な効果があることが知られていましたが、なぜ運動が脳に有益なのか、詳しい仕組みは分かっていませんでした。 本研究成果は、2014年11月18日 9時(英国時間)「Molecular Psychiatry」オンライン速報版に掲載されました。

研究の背景

運動は、動物の脳にある神経細胞や分子に様々な変化をもたらし、また動物の行動にも多くの影響をもたらします。例えばマウスやラットでは、運動によって海馬で起こる神経細胞の新生が活発になったり、行動面では抑うつ行動の減少や記憶学習能力の向上が見られるなど、有益な効果があることが知られています。私たち人間でも運動は、生活習慣病だけでなく、うつ病や認知症の予防や治療に取り入れられていますが、なぜ運動が脳に有益な効果があるのか、その詳しい仕組みは分かっていませんでした。

セロトニンは動物の情動や記憶に関わる脳内の神経伝達物質の1つで、うつ病などの精神疾患に関わっていると考えられています。一方、セロトニンは運動によって脳で増加することが知られていますが、セロトニンがどの様に働いているのか分かっていませんでした。 そこで、セロトニンの受容体に着目し、マウスを用いて運動が脳にもたらす変化の仕組みの解明に挑みました。セロトニン受容体を欠損したマウスを用いて、運動後に海馬の神経細胞とマウスの抑うつ行動を解析した結果、セロトニン3受容体が、運動のもたらす抗うつ効果や海馬の神経細胞の新生に重要な役割を果たしていることが明らかになりました。

セロトニン3受容体欠損マウスでの運動実験

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

うつ病は、ストレスをはじめとして私たちの生活習慣や環境と密接に関わっている病気です。一方で、運動はうつ病の予防や改善のために推奨されています。

本研究成果は、うつ病などの精神疾患の予防や「こころの健康」(メンタルヘルス)※1の維持や健康増進に貢献することが期待されます。さらに、運動がうつ病の治療にも役立つことから、うつ病の患者さんの苦痛の軽減にも貢献すると考えられます。

特記事項

本研究成果は、2014年11月18日に「Molecular Psychiatry」のオンライン速報版に掲載されました。

論文名

The 5-HT3 receptor is essential for exercise-induced hippocampal
neurogenesis and antidepressant effects.

用語解説

※1こころの健康(メンタルヘルス)
厚生労働省は、21世紀における国民健康づくり運動(健康日本21)の「こころの健康(メンタルヘルス)」で、自殺防止の観点から、うつ病の予防や早期発見と治療を重要な目標にかかげています。

参考URL

Molecular Psychiatry
http://www.nature.com/mp/index.html

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