2012年5月24日

<リリース概要>

大阪大学大学院法学研究科大久保規子教授が主催するグリーンアクセスプロジェクトでは、東日本大震災により、市民参加・協働の重要性が再認識される中、全国の自治体を対象に「市民参加・協働条例に関するアンケート」および「環境条例に関するアンケート」を行い、地域に根ざした市民参加・協働の仕組みの現状と課題について我が国で初めての包括的な調査を実施しました。

その結果、参加・協働の重要性は広く認識されているものの、条例の整備は3割にとどまっていることや、条例を制定していてもその運用実績が少ない自治体もあることが明らかとなり、今後、参加・協働で実効的な地域づくりを進めるためには、条例整備の支援、コーディネータの育成、地域の実情に応じたきめ細やかな仕組みづくり等が必要であるという示唆が得られました。

 

<アンケート調査の内容と背景>

「市民参加・協働」の推進は、阪神淡路大震災や地方分権を契機として1990年代後半から重要な政策課題となりましたが、市民参加・協働に関する条例は多種多様であり、今まで包括的な全国調査は実施されていませんでした。「国連持続可能な開発会議(リオ+20)」の開催〈2012年6月20日(水曜日)~22日(金曜日)〉を直前に控え、グリーンアクセスプロジェクトでは、全国の1660自治体(岩手県・宮城県・福島県内の自治体を除く)を対象に我が国で初めての包括的な全国調査を実施しました。2011年11月から2012年3月にかけて、郵送でアンケートを配布し、郵送、メールまたはWebページからの入力により回収する方式により、「市民参加・協働条例」と「環境条例の参加規定」に関する2種類のアンケートを行い、約6割の自治体から回答を得ました。また、補充的に複数の自治体のヒアリング調査も実施しました。アンケート項目、調査結果の詳細は、グリーンアクセスプロジェクトのホームページを閲覧ください(http://greenaccess.law.osaka-u.ac.jp/summary)。

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図1 回収したアンケートの一部
(約950の自治体から回答があった)

 

<アンケート調査結果及び考察(詳細は別添参照)>

【市民参加・協働条例について】

→条例を制定済みの自治体は、自治基本条例を入れても3割にとどまるものの、検討中の自治体も2割あり、条例の有無を問わず、参加・協働の必要性は共有されています。制定率は、人口50万人以上の自治体が高く、九州は低いなどの地域差があり、関西圏の中でも和歌山、奈良は低いなどの特徴があります。

→制定済みの自治体では、市民活動の活発化等の効果が見られる反面、参加者の固定化や、市民と行政のニーズのミスマッチ等の課題も出てきており、コーディネータを含む人材育成が重要となっています。

→無作為抽出方式による参加の呼びかけや、市民提案について丁寧な部局間調整を行うなど、きめ細やかな工夫を行う自治体もある一方で、ほとんど制度の運用実績のない自治体もあり、同じような制度をもっていても、その実効性について自治体間格差がみられます。

【環境条例について】 環境基本計画、美化・リサイクル分野での参加・協働が主流

→環境条例における参加規定は、アセスメントや廃棄物では意見書、公害防止や緑地保全では協定というように、対象となるテーマによって異なる傾向が認められます。

→希少種指定の提案制度、違反行為の通報制度等、地域独自の特徴的な取組みもみられ、先進自治体での協働の仕組みづくりは各地域の特性を踏まえて進められつつあるといえます。

 

<本アンケートから得られる示唆>

参加・協働の重要性は広く認識されていますが、制度の整備は意外に進んでいません。条例を持たない自治体の多くは、従来コミュニティがしっかり機能しており、制度は不要と思われていた小規模自治体ですが、アンケートでは、コミュニティ組織の崩壊・弱体化を憂え、制度的なてこ入れが必要だがその余裕がないとする切実な声もあり、必要に応じ、国、中間支援NPO等による広域的なサポートが望まれます。

また、単に条例を制定するだけでは、必ずしも目に見える成果にはつながっていない現状も明らかになり、今後、参加・協働により実効的で持続可能な地域づくりを進めるためには、コーディネータの育成や地域の実情に応じたきめ細やかな仕組みの整備が必要であるといえます。

この調査結果を受け、グリーンアクセスプロジェクトでは、実効性のある仕組みの整備・運用を促進するため、条例情報や先進事例の発信に努めて参ります。また、今回は、自治体を対象として調査を行いましたが、今後は、実際に制度を活用するNPOの意向調査を行うことにより、使いやすく実効的な制度を検討・提案していきたいと考えています。

 

<グリーンアクセスプロジェクトについて>

グリーンアクセスプロジェクトは、環境権を保障し、持続可能な社会をつくるため、あらゆる人々の多様な環境保全活動が相乗効果を発揮できるような参加と協働の仕組みの構築を目指しています。正式名称は、「持続可能な社会づくりのための協働イノベーション-日本におけるオーフス3原則の実現策」といい、最先端・次世代研究開発支援プログラム研究(内閣府総合科学技術会議)の助成(2010~2013年度)を受けて進められています。オーフス条約とは、リオ宣言(1992年地球サミットで採択)の市民参加の原則を受けて作られた環境分野の市民参加条約で、市民参加の3原則として、「情報公開」、「政策決定への参加権」、「裁判を受ける権利」(グリーンアクセス権)を保障しています。2012年4月末現在、EU諸国を中心に45カ国が加盟していますが、日本は未加盟です。そのため、本プロジェクトは、日本の社会・文化を活かし、地域に適した形で、グリーンアクセス権を保障する方策を検討しています。

グリーンアクセスプロジェクトは、大久保規子教授とさまざまな研究者、NPOとの協働により運営されており、本調査は、公益財団法人 公害地域再生センター(あおぞら財団)および一般社団法人 環境パートナーシップ会議(EPC)とともに実施しました。

グリーンアクセスプロジェクトのホームページでは、市民が環境を守れるようにするための仕組みについて、国内外の情報提供を行っています。全国の市民参加・協働条例のポータルサイトも設けていますので、ぜひご覧ください。

ホームページURL http://greenaccess.law.osaka-u.ac.jp/about

 

<別添1 アンケート調査の概要>

■市民参加・協働条例の整備状況について初の包括的な全国自治体調査

「市民参加・協働」の動きは、阪神淡路大震災や地方分権を契機として1990年代後半から重要な政策課題となったが、市民参加・協働に関する条例は多種多様であり、包括的な全国調査は実施されていなかった。

グリーンアクセスプロジェクトでは、東日本大震災により、市民参加・協働の重要性が再認識されるなか、また、国際的には持続可能な開発会議(リオ+20)の開催を直前に控え、全国の1660自治体(岩手県・宮城県・福島県内の自治体を除く)を対象に、初めての包括的な全国調査を実施。「市民参加・協働条例」と「環境条例」の参加規定に関する2種類のアンケートを行い、約6割の自治体から回答を得た。

【市民参加・協働条例について】

■条例制定3割・検討中は2割 ほとんどが協働の取組みの必要性感じている

1.市民参加・協働に関する条例(自治基本条例、市民参加条例、市民活動支援条例等)を制定済みの自治体は全体の約3割。人口規模が大きい自治体ほど制定率が高い。また検討中の自治体も2割を数える。(問1)

2.制定状況には地域差が見られ、関東は制定している自治体が多く、九州は少ない傾向が見られる。(問1)

3.参加手法については、約半数の条例で「パブリックコメント」「審議会委員への市民公募」「住民投票」について条例に明記している。(問8)

4.条例の効果として、「職員の意識変化」、「コミュニティ・市民活動の活発化」を挙げる自治体が4割。(問20-4)

5.課題として、「制度の認知度が低い」、「参加者の固定化」、「参加者層の偏り(年齢層・男女比等)」を挙げる自治体が多い。また、市民・NPO活動支援の必要性は依然として高い。(問20-5)

■考察

・問22の自由意見によれば、条例制定の有無に関わらず、協働の必要性については肯定的な意見が多く、実効性のある具体的施策を工夫して、市民参加・協働を進めたいという自治体の意思が感じられた。

・参加者固定化、市民と行政のニーズのミスマッチ等の課題については、コーディネータを含む人材育成が重要。

・無作為抽出方式による参加の呼びかけや、市民提案について丁寧な部局間調整を行うなど、きめ細やかな工夫を行う自治体もある。同じような制度をもっていても、その実効性について自治体間格差がみられる。

・小規模自治体では、コミュニティがしっかりしているため、改めて協働という必要はないという声のある反面、コミュニティ組織の崩壊・弱体化を憂え、制度的なてこ入れが必要とする声もあり、二極化傾向が認められる。

【環境条例について】

■環境基本計画、美化・リサイクル分野での参加・協働が主流

1.環境基本条例は約6割の自治体が制定(問1)。大都市ほど制定率が高い。関東は高く、北海道は低いなど地域差あり。基本計画策定時の参加規定は広く普及。加えて、一般的な参加推進規定を置くところもある。

2.環境基本計画策定については、条例によるか否かを問わず、「環境審議会への諮問」「パブリックコメント」「市民アンケート」を通じて市民の意見を反映させる取組みが一般的に行われている。(問3)

3.環境基本条例以外の環境条例の中で、具体的な参加規定を設けている自治体が161(16.7%)。各種推進員制度(88件・54.7%)、意見提出(64件・39.8%)、協定制度(49件・30.4%)などの手法が普及。(問9、10)

4.2011年の「改正環境保全取組促進法」に基づいて協働取組等行動計画を策定する予定があるかについては「作成予定が3.3%」「今後検討するが44.5%」「策定予定無が46.6%」であった。(問12)

■考察

・環境条例おける参加規定は対象となるテーマによって異なる。アセスメントや廃棄物では意見書、公害防止や緑地保全では協定、ゴミや美化では協議会や推進員制度、美化や温暖化対策では表彰制度という傾向がみられる。

・希少種指定の提案制度、生息地等協働保全制度、違反行為の通報制度、環境オンブズマン等、地域独自の特徴的な取組みもみられ、環境分野での協働の仕組みづくりは各地域の特性を踏まえた形で行われつつある。他方、具体的な取組みが進んでいない自治体も数多くあり、目に見える成果を積み上げて、その事例を広く全国に発信する必要性が高い。

 

<別添2 条例の制定状況>

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図2 条例の制定状況

 

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図3 クロス集計:各都道府県の市民参加・協働条例の制定率

 

<参考URL>

http://greenaccess.law.osaka-u.ac.jp/

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