2018年8月30日

増大するIoT通信とモバイルネットワーク

「現在のモバイルネットワークは、スマートフォンなどモバイル端末での通信を想定して作られたもの」と長谷川准教授は言う。「一台一台の端末を認識し、動画など容量の大きな通信でも安定的に行えるよう組み立てられています」
一方、IoTの通信はモバイル端末の通信とは特性が随分異なる。例えば、家庭の電気使用量データを電力会社に送信する「スマートメーター」もIoT端末。一台一台の端末の送信する情報量は少ないが、台数は多く、月に一回、ある時点で集中して送信が発生する。しかも、このようなIoT端末数は将来的には何十億〜何百億に達するとも言われている。「そのための専用回線を敷設するのはコストもかかるので、既存のインフラであるモバイルネットワークを活用するべきだと考えられます」。とはいえ既存のネットワークに、今後のIoT通信量の増大に対応できる余裕はない。

制御を「サボる」ことでIoTの性能確保

モバイル通信では、情報はまず端末から基地局に送信され、次に、モバイルコアネットワークを通ってインターネットに運ばれる。ユーザーがスマートフォンの画面上で「圏外」「アンテナが2本」などと認識できるのは基地局まで。基地局とインターネットの間を取り持つモバイルコアネットワークが意識されることはまずない。しかし長谷川准教授は、そのモバイルコアネットワークが混むことに注目している。「今、つなぎの部分であるノードがいっぱいなので、ノードをクラウド化することで利用効率を上げたい。端末1台1台を認証し、性能を保証するような『きちんとした制御』をサボることで、負荷を下げる方法を追求しています」
例えば、ひとつの電力会社が管理するスマートメーターを集約して処理を行うことで、負荷を下げようというのが基本の発想だ。「通信費の請求先は同一の電力会社ですから、請求先に関するトラブルは生じません」

計算データをもとに具体的な実験へ

既存のモバイルネットワークは世界中で標準化されている。したがって、長谷川准教授は、既存のモバイルネットワークを利用したIoT通信の集約も、この世界標準方式にできる限り従ったものを目指している。さらに、どのノードでどの程度集約すると、どれだけ性能が上がるのかを検証するために数学的解析を行い、経路設定にかかる時間も評価している。  現在は研究室の中で仮想環境を作り実験を行っているが、通信ネットワークに関する具体的な実験は大学だけでは難しい。そこで、将来は通信キャリアやネットワークサーバに関わる企業と共同で研究開発に取り組んでいきたいという。「現場の皆さんは『性能の向上』を追及するでしょう。そして我々研究者は『なぜ性能が上がるのか』を追求し、協働してIoTが抱える課題をクリアしたいと思っています」

 

 

●長谷川剛(はせがわ ごう)
2000年大阪大学基礎工学研究科修了、博士(工学)。同年サイバーメディアセンター助手、02年同センター助教授を経て、07年より現職。

(2018年2月取材)

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