2018年9月4日

クォークの根本理論は「量子色力学」

自然界には四つの力が存在する。「重力」と電気や磁石の力である「電磁力」、原子核のベータ崩壊などの原因となる「弱い力」、そして素粒子の間に働いて物質の基本単位を構成する「強い力」。その中で、池田特任助教の研究対象は「強い力」だ。

「強い力」の根本的な粒子は素粒子。「素粒子の中で、主役は『クォーク』。原子核を構成する核子(陽子や中性子)も、クォークからできています。その他に、クォーク同士の間にあって強い力を媒介する役割の『グルーオン』。核子のなかでクォークたちがグルーオンをキャッチボールしあっているとイメージして下さい」  一つのクォークには3種類ある。電気の世界で電荷に+−があって打ち消し合うのと同様に、クォークが3種類集まると、強い力を周りに及ぼさない安定した状態になる。量子色力学ではこの3種類のクォークを、分かりやすいように赤・緑・青(光の3原色)に分類する。3種が集まった状態は「白色=色をもたない状態」だ。
「クォークからできている粒子を『ハドロン』と言います。陽子や中性子などの核子はクォーク3個を持ったハドロン。湯川秀樹博士が予言したπ(パイ)中間子などはクォークと反クォーク(クォークの補色をもつ)の2個によるハドロンです」

4個以上のクォークからなるハドロンを見つけたい

ハドロンには、ルールが一つある。「白色」でなければならないのだ。「理論として我々は知っています。で、不思議に思うのは、全部で400ぐらいあるといわれるハドロンのほとんどが、なぜクォーク2個か3個でできているのかです。白になるためには、必ず2個か3個でなければならない必要は全くない。そこで4個、5個以上でできているハドロンを見つけたい」  4個以上のクォークからなるハドロンを見つけようと、今さまざまなアプローチで研究が行われている。量子色力学の理論は方程式で表現されていて、計算にはスーパーコンピュータを要する。「初めからクォーク6個といった不安定な状態は計算できないので、一度安定な粒子に分け、3個が2組という条件を与えて解くのが我々の方法。3個と3個の間を媒介する力も同時にひき出すことができるし、力の及ぼしあいもトレースできます」。基礎理論から安定粒子間の力を求め、さらにその力を、粒子と粒子をぶつけた時の散らばり方を扱う「散乱理論」に結びつけていく。

4個のクォークの正体を明らかに

2016年に共同研究で、先に実験で存在が予測された「4個のクォークのハドロン」の正体を明らかにした。散乱理論に則って大規模数値シミュレーションを行った結果、4個のクォークからなる新粒子と思われていたZc(3900)が、素粒子なら当てはまるはずの条件を満たしておらず、新粒子とは言えないことを解明した。

●池田陽一(いけだ よういち)
2004年大阪大学理学部卒業。09年大阪大学大学院理学研究科修了、理学博士。09年東京大学大学院理学系研究科特任研究員。10年理化学研究所リサーチアソシエイト。11年日本学術振興会特別研究員(東京工業大学理工学研究科)。12年理化学研究所特別研究員を経て、16年より現職。

(2018年2月取材)

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