2018年5月24日

月の砂を解析し、月と地球の不思議に迫る

地球の4分の1の大きさを持つ月は、地球にさまざまな影響を及ぼしている。「1日が24時間なのは月の影響だし、地軸の傾きも、月があるおかげでほとんどブレない。月は地球の環境維持に貢献しています」
月には、月の歴史はもちろん、地球の過去を知る手がかりも残されている。「月では約38-40億年前に大きなクレーターをたくさん作るような、天体衝突が起こったことが分かっています。だとすると、広い宇宙の中では月と地球は一心同体なので、同時期、地球にも同じような出来事があっただろうと考えられます。地球の誕生は約46億年前ですが、40億年より古い岩石はありません」。0.1mm程度の鉱物と呼ばれる岩石の破片だと44億年前のものが残っているが、岩石と言える大きさでは発見されていない。「その理由は、月にクレーターができたのと同じ時期に地球にも大量の隕石などが降り注ぎ、それ以前の地表を壊してしまったからだと考えられます」
寺田教授の研究グループは、アポロ15号が1971年に持ち帰った月の砂を、独自の方法で成分を解析している。「月の砂の中で見つかるガラス玉の成分を調べると、月にいつ火山活動があったか、クレーターを作るような隕石の衝突がいつ起こったかなど、月—地球システムの歴史が分かります」。

非破壊による元素分析法で研究を進めたい

「一般に岩石や砂を分析する場合、削ったり、焼いたり、酸で溶かしたりするのが普通です。先の月の砂の分析も、ほんの少しだけ削って分析する方法でした。しかし、今後計画されている火星や小惑星のサンプルリターンで採取される試料は、極少量で非常に貴重なので、極力ダメージが小さい分析方法を開発する必要があります」
そこで寺田教授が取り組んでいるのが、物質透過能力の高い素粒子ミューオンを用いた元素分析法。㎝サイズもある物質でも、非破壊で内部の元素の濃度や分布を知る能力を持っている。寺田教授は、大阪大学核物理研究センターが開発したミューオンビーム生成装置MuSICを利用し、隕石の非破壊定量分析に成功した。「世界初のオモロイ物を作ろう、という阪大のものづくり文化が活きたと思います」。18年夏に小惑星に到達する「はやぶさ2」が、20年に持ち帰る試料の分析にも威力を発揮すると期待されている。「持ち帰ったサンプルから、地球以外に有機物はあるかを検証したいと考えています。ミューオンを用いる方法なら、宇宙の状態のままで岩石の中味を見ることもできる。生命のタネとなる有機物を発見できたら最高ですね」

人との出会いから研究が発展する

「独創的な研究には人との出会いが大切」と寺田教授は言う。「新しい元素分析法にしても、たまたまある日、阪大でミューオンを研究している素粒子物理の研究者と話したことがきっかけ。異なる分野の人との出会いが“化学反応”となって、研究が予期せぬ方向に発展することは、よくあります」
プラズマ物理の研究者との出会いから、月周回人工衛星「かぐや」の観測データを分析したこともある。そのデータを元に、地球から高エネルギーの酸素イオンが漏れて月に到達していることを突き止めた。「月、地球、太陽が一直線になった時、月の上空100kmの酸素イオン濃度が増えるという興味深い現象を見つけました」。太陽風で地球の大気(酸素)がはぎ取られ、真後ろにある月まで地球風として飛んでいく(Terada et al Nature Astronomy 2017)。この観測結果に、昨年は国内外から取材が殺到した。

●寺田健太郎(てらだ けんたろう)
1989年大阪大学理学部卒業、94年理学系研究科物理学専攻修了、博士(理学)。94年広島大学理学部助手、2006年同大学理学研究科准教授、10年同大学理学研究科教授を経て、12年より現職。

(2018年1月取材)

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