2018年8月7日

新手法で金属ナノ粒子触媒を開発

有澤准教授による成果の一つに、「創薬に役立つ金属ナノ粒子触媒の開発」がある。「市販の金属ナノ粒子触媒を使って薬のタネになる化合物を作ってみたら、思いのほか不便で、触媒機能としても不十分」と感じたことが、自ら触媒を作ってみようと思い立ったきっかけだった。  従来、金属ナノ粒子は、事前に型を作り、その中でナノ粒子が作られてきた。また、金属を触媒として化合物を合成する際、通常は反応を加速させるリガンドという物質を入れるが、後から除去しなくてはならないので手間と時間がかかり、反応後すぐに活性が調べられないのも不便だった。それに対し、有澤准教授が開発した新しい方法では、ナノ粒子が土台の上に整然と積み重なると同時に型もできるため、事前に型を作る必要がない。また、このナノ粒子触媒は金属触媒でありながらリガンドフリーで化合物を合成でき、すぐに活性が調べられる利点があることも分かった。開発に成功した金属ナノ粒子触媒の一つは、世界5カ国で特許を取得し、現在医薬品産業をはじめ広く利用されている。

創薬ライブラリーも充実

独自の方法によって金属ナノ粒子触媒の開発に成功した後、他大学などの研究機関との共同研究がスタート。兵庫県佐用町の大型放射光施設、Spring-8(スプリングエイト)で構造解析を行い、さまざまな金属でナノ粒子触媒を理論的に創製した。さらに、連続的にナノ粒子触媒が作れるように既存の装置を改良し、連続照射型マイクロ波合成装置の開発に成功した。ナノ粒子触媒を用いて、独自の創薬研究法を開発し、薬のタネとなる化合物を集めた創薬ライブラリーも構築した。  現在も「より便利に、安価に」と研究を続ける。「最初の研究では土台は金でしたが、最近は、ガラスでも同様な触媒活性が実現することが実証できています。触媒となる物質も、高価なパラジウムから安価なルテニウムへ代替可能であると分かりました。さらに安価な鉄などに代替できないかと考え、現在取り組んでいます」。今後さらに用途が広がるかもしれない。

失敗こそが貴重な情報

「触媒研究で大変だったのは、反応液の濃度など最適な条件を発見することです。ある金属でうまくいっても、別の金属ではうまくいかないことは多く、少しずつ条件を変えながら泥くさい作業が続きました」。ほとんど先行文献がない状態だったため、「自分たちの失敗こそが、もっとも貴重な情報となった」と話す。

 

●有澤光弘(ありさわ みつひろ)
1999年大阪大学大学院薬学研究科博士後期課程修了、博士(薬学)・薬剤師。千葉大学大学院薬学研究院助手、米国ハーバード大学文部科学省在外研究員、北海道大学大学院薬学研究院准教授を経て、2013年より現職。07年日本薬学会奨励賞、17年大阪大学賞受賞。

(2018年2月取材)

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