2018年5月17日

シミュレーションが情報共有ツールとして有効

安福講師は防災の観点から、不特定の人が利用する施設周辺での人の流れをシミュレーションする研究に従事している。2013年、グランフロント大阪がオープンした時には、当日の誘導や警備を担当するコンサルタント会社から相談を受け、混雑を予想して人の流れを可視化した。「シミュレーション結果を可視化し、情報を関係者間で共有してオープンに臨みました。実際には予測通りにいかなかった点もありましたが、シミュレーションが情報共有ツールとして有効だということが実感できました」。

シミュレーションから広がる応用

2015年からは神戸大学、富山大学、パナソニック株式会社との共同で、南あわじ市において津波からの避難を想定した研究を実施。自治体の避難訓練に加わっての社会実験だった。「パナソニック株式会社が試作中の誘導灯を使って、人々が夜間に指定の避難場所へ到着できるかを実験しました。地元住民は避難場所を元々知っていたからスムーズにたどりつけましたが、初めてそこに来た観光客を想定した人はほとんど誘導灯の存在に気づきませんでした」。そこでサイバーメディアセンターの大規模可視化システムを使い、CGによる試作品の映像を若年者から高齢者を含む一般の被験者に見せながら、改良の方向性を示した。「今後は自治体に対し、誘導灯配置の最適化に関するシミュレーションをしたいと考えています」。他にも、大阪市にある梅田の地下街を想定した避難誘導のシミュレーションにも取り組んでいる。

各人の動きをマルチエージェントシステムで表現

可視化には、個々の人の動きを再現するモデルを採用している。「離れて見ると人のかたまりにしか見えない群集も、局所的に見ると、近くの人間同士で相互に作用し合っています。一昔前にはコンピュータの性能が及ばず、群集はある場所で1秒間に何人いるかなど、人のかたまりとしてしか扱えませんでした。しかし、現在ではマルチエージェントシステムを使い、一人ひとりのパラメータ(年代、歩行速度、性別など)を細かく設定することで、人間同士の局所的な相互作用から表れる群集行動特性まで表現できます」。

 

防災と建築の視点から見た「いい空間」

安福講師は「人がどう空間を把握するか」も研究している。「安全以外の面も考え合わせ、どんな建物が快適かを突き詰めたい」。建築自体のよさもシミュレーションで評価したいという。防災の観点から見た「いい建物」と「居心地いい建物」は本来全く別で、設計者が安全上の規制によって制限を受けることも多い。しかし、安福講師は「両立は難しいが、それでもいい空間をめざしたい」と語る。

建築を学ぶ若い人へ

「過去の成果のうえに自分の研究を積み重ねて、安全、快適な暮らしを実現したい」。建築を学ぶ若い人には、芸術、コンピュータ、歴史、心理学など、自分の領域以外に幅広い興味をもってほしいという。「新しい発想やアイデアは、ゼロから一ではなく実は新しい組み合わせが新しいものを生むのです」。

 

●安福健祐(やすふく けんすけ)
2001年大阪大学大学院工学研究科博士前期課程修了。株式会社コナミデジタルエンタテインメント勤務を経て、07年同研究科博士後期課程修了。同年サイバーメディアセンター助教、15年より現職。17年大阪大学賞受賞。

(2018年2月取材)

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