2018年8月23日

親が同じ細胞はつながりやすい

人間は脳の複雑ネットワークを介して情報を処理している。しかし、その複雑ネットワークがどう作られるかは、解明されていない。  「マウスの脳では、ニューロンの結合確率はせいぜい2割。10個のうち2個しか繋がらないことが知られています。『その2個がどうやって選択されたのか』を知ることが、神経回路がどう作られるかを最終的に知ることになると考えています」と足澤助教は語る。  2009年、「1つの幹細胞から600ほどの子ども(姉妹細胞)ができるが、親が同じ姉妹細胞はシナプスを作りやすい」という研究が世に出た。「マウスが生まれる前から、生まれた後のニューロンの結合相手が決まっている。これはすごい発見だと思いました」。  先行研究に刺激を受けた足澤助教は、姉妹細胞がなぜつながりやすいのかを、電気生理学的手法を用いて実験。その結果、「シナプスの結合性には双方向性と一方向性の2種類あることが分かりました。さらに『生まれたてのマウスでは姉妹細胞であってもなくても繋がり方に差はない。生後13日から16日経ち、目が開いて外界の刺激を受けるようになると、姉妹細胞同士の結合が増え、20日目には姉妹細胞に一方向性が減り、双方向結合だけが残っていく』ことを発見しました」。

鍵を握るのは、細胞を接着する分子

二つの姉妹細胞が「互いが姉妹であると分かる」のに鍵となる物質は、細胞接着分子であるクラスター型プロトカドヘリンだと考えられる。足澤助教は、同研究室の八木健教授が同定したクラスター型プロトカドヘリンをターゲットとして、その後の研究を進めている。
このプロトカドヘリンは全部で58種類の分子からなり、そのうち選ばれた10数種類が1つの細胞で発現する。その組み合わせはものすごい数だ。「膨大な組み合わせになることで細胞に個性が生まれ、複雑な神経回路が作られると考えています」。  プロトカドヘリンの種類が同じでなければ、細胞同士は接着しない。「このニューロンをくっつけてシナプスを作ろう」ということを、接着分子が決めているのだ。足澤助教は「プロトカドヘリンがないマウスは、シナプスは作れても、双方向結合が増えない」ことを実験で明らかにした。細胞接着分子が姉妹細胞間のシナプス形成に深く関わり、神経細胞のネットワーク作りに重要な役割を果たしていることを示す重要な成果だ。
現在は、生後13日のマウスを用いて、ヒゲから得られる情報が双方向性の回路形成に与える影響を明らかにしようとしている。「ヒゲを2日間切っただけで、双方向性の回路形成が劇的に減りました」。ヒゲからの経験が、マウスの神経回路形成に大きな影響を与えていた。神経回路の発達は遺伝子のプログラムによってだけ決まるのではなく、生まれてからの経験による刺激も非常に大事であることが分かりつつある。

プロトカドヘリンの種類が同じでなければ、細胞同士は接着しない。「このニューロンをくっつけてシナプスを作ろう」ということを、接着分子が決めているのだ。足澤助教は「プロトカドヘリンがないマウスは、シナプスは作れても、双方向結合が増えない」ことを実験で明らかにした。細胞接着分子が姉妹細胞間のシナプス形成に深く関わり、神経細胞のネットワーク作りに重要な役割を果たしていることを示す重要な成果だ。
現在は、生後13日のマウスを用いて、ヒゲから得られる情報が双方向性の回路形成に与える影響を明らかにしようとしている。「ヒゲを2日間切っただけで、双方向性の回路形成が劇的に減りました」。ヒゲからの経験が、マウスの神経回路形成に大きな影響を与えていた。神経回路の発達は遺伝子のプログラムによってだけ決まるのではなく、生まれてからの経験による刺激も非常に大事であることが分かりつつある。

●足澤悦子(たるさわ えつこ)
1999年藤田保健衛生大学衛生学部卒業。2006年総合研究大学院大学生命科学科卒業。06年生理学研究所脳形態解析部門研究員。09年同研究所視覚情報処理部門研究員。12年生理学研究所遺伝子改変動物作製室 特任助教。17年より現職。

(2018年2月取材)

未知の世界に挑む研究者の物語『究みのStoryZ』に戻る

阪大生と卒業生の物語『阪大StoryZ』に戻る

この組織の他の研究を見る

Tag Cloud

back to top