2018年6月12日

お金を生み出す権限は誰にあるのか

片桐准教授がお金という事象に興味をもったのは、学生時代。「お金は鋳造された自由といえます。お金があるからこそ、農耕や狩りに時間を費やさなくても食べていけるし、自分が大学生でいられるのも、お金があるからだと思いました」。とくに衝撃を受けたのが、1990年代にはやった地域通貨だった。「いまのお金が自明ではない、という新鮮な驚きがありました」。ところが、その地域通貨は円に交換できないといわれていた。「理由は国の通貨独占発行権に抵触するからだというのですが、そんなこと、どの法律にも書かれていないのですよね。それと、お金の制度は国が好きなように決めていいのか?という点も、疑問に思いました」。2002年にユーロが使われるようになったことも、片桐准教授に大きなインパクトを与えた。「今の通貨制度は永続的なものではないんだと実感しました」。
最初の研究テーマは、「お金の仕組みを変える必要が生じた時に誰がどうやって変えるのか」。「国際法上の紛争の場面で、各国に通貨権があるなどと言われるようになったが、国内法の関係では、根拠がどこにあるのか分からなかったのです」。
欧米での貨幣に関する歴史との比較など研究の結果、「国家には、お金とは何かを決定する権限、つまり通貨の仕組みや単位、価値を決める権限はあるが、それを超えたお金自体を生み出す権限(発行や製造)までを独占しているとは言えない」という結論に至った。

最初の研究テーマは、「お金の仕組みを変える必要が生じた時に誰がどうやって変えるのか」。「国際法では、各国に通貨主権があるなどと言われてきましたが、国内法の関係では、根拠がどこにあるのか分からなかったのです」。
各国の通貨制度やそれを支える理論の検討や我が国における歴史的な経緯等を分析した結果、「国家には、お金とは何かを決定する権限、つまり通貨の仕組みや単位、価値を決める権限はあるが、それを超えたお金自体を生み出す権限(発行や製造)までを独占しているとは言えない」という結論に至った。

中央銀行制度、財政を憲法学的に研究

現在は、中央銀行制度を憲法の側面から研究している。現代の管理通貨制度の下では、お金の制度がしっかりしているということを担保するために、独立した中央銀行の存在が重要になる。80年代から、中央銀行の役割が世界的に認識された。そのなかで、重視されたのが中央銀行の独立性である。これを憲法体系の中にどのように位置づけるか、そのような中央銀行をどのようにコントロールするかは、世界中で議論され始めている。

もう一つの研究テーマは財政。本来、財政とは「税金を取ってそれを公共の目的のために使うこと」と片桐准教授は指摘する。「しかし現実には、財政赤字をだすことで、かろうじて行政サービスが維持され、社会が回っています。このような財政赤字に対しては、金融市場が出すメッセージが重要なシグナルになるはずですが、しかし、現状、中央銀行が国債を大規模に購入していることもあって、そのシグナルは弱まっています。このように中央銀行のあり方は、財政のあり方とも密接にかかわっています。憲法学は、こういう現代の財政運営の姿を十分に捉えてきませんでした。そうすると、その領域で、権力が悪いことをしても、それをチェックすることも、指弾することもできません。そこで、今の憲法の下で、こういう事態がなぜ発生するのかを解き明かし、それにパッチを当てるというのが、当面の課題であり、憲法学の役割のひとつだと考えています」。「憲法は、よりよい統治を実現するための道具。どう使われているか、その機能や有効性を考え、使い方を磨くことが重要です」

憲法学とは物理学のようなもの

研究について語るのは難しいが、憲法学とは何かなら語れるかもしれないと片桐准教授は言う。

●片桐直人(かたぎり なおと)
2007年京都大学法学研究科単位取得満期退学、博士(法学)。08年近畿大学法学部講師、11年同大学准教授を経て15年より現職。

(2018年2月取材)

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