2018年7月24日

変形させても不変な性質に着目

「大阪大学ではいくつもの超伝導の研究が行われています。室温での超伝導をめざす研究もあるし、超伝導ケーブルやリニアモーターカーなどへの応用研究もあります。また量子コンピュータへの応用をめざし、企業でも盛んに研究されています」
研究では、数学の一分野であるトポロジーの考え方を基に、様々な超伝導物質を分類する。「トポロジーでは、形を連続的に変えても性質が代わらないものを同じグループに分類します。例えばお椀とオレンジは穴がない仲間に分類され、取手付きのコップとドーナツは穴が一つある仲間に分類される。同じ発想で超伝導物質を『穴がない』『穴が一つ』などと概念的に分類し、それぞれの性質の違いなどを調べていきます」
トポロジーのメリットについて、水島准教授は「物質の状態を分類する時、電気の流れやすさや対称性(ある変換に関して不変である性質)を使って分類するのが従来からの方法。しかしトポロジーを使うと、対称性などでは分類しきれなかった物質の状態まで分類できるのです」と説明する。

マヨラナ粒子を制御したい

さらに、トポロジカルな見方をすると、普通の超伝導と普通ではない超伝導があるという。「普通ではない方の超伝導物質の表面を切り出すと、その度にマヨナラ粒子という奇妙な粒子が現れると考えられます」
マヨナラ粒子は、1930年ごろに存在を予言されたが、まだ見つかっていない未知の粒子。「普通はマイナスの電荷を持つ電子があれば、プラスの電荷を持つ陽電子があり、陽電子は反粒子である電子と出会うと消えてしまいます。ところがマヨラナ粒子の反粒子は自分自身。量子力学的の言葉でいえば『二つの量子状態(電子が1個ある状態とない状態)が絡み合ったような、重ね合わせの状態』にあるのです」
超伝導の状態にある物質の表面には、そのマヨナラと同じ性質の粒子がトポロジー的にあると考えられている。「普通の電子と異なる性質をもったマヨラナ粒子を制御できれば、新しい機能性を導き出せます」

量子コンピュータ開発や中性子星の解明も

応用への期待もある。マヨラナ粒子の量子状態を操作・制御できたら、量子コンピュータが実現できる。「トポロジカル超伝導体から量子コンピュータを作ろうという研究は世界的なトレンド。普通の超伝導体を使うより堅牢な量子ビットを実現できます」
また、天体の共同研究でも成果を上げた。「宇宙に浮かぶ最も高密度の天体である中性子星の内部は超流動状態になっていることが知られています。原子核理論、素粒子物理の研究者と3人で、中性子星の中の超伝導状態はトポロジカルに非自明であることを解明しました」

●水島健(みずしま たけし)
2005年岡山大学自然科学研究科修了、博士(理学)。同年岡山大学大学院自然科学研究科助手、07年同研究科助教を経て、14年より現職。

(2018年2月取材)

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