2018年10月11日

触媒の白金を8割削減した電極

2016年、パナソニックなどとの共同研究で、触媒に使用する白金を約80%削減した燃料電池の電極を開発したことで、神谷准教授たちの研究グループは注目を集めた。
燃料電池では、水素を酸化するのに触媒が必要であり、その材料には希少金属である白金が使用されている。「これまでは、複数原子がいわば団子状に固まった状態の白金を触媒に使用していましたが、白金を単原子化することで、団子の中の方にあって使えなかった原子が使えるようになりました」。白金原子は、すぐに凝集する性質があるので、「原子が集まってくっついてしまわないように、1原子ずつ高密度、安定的に並べていった」という。燃料電池のコスト低減はもちろん、持続的なエネルギー変換につながる成果。次世代の発電システムとして注目されている「固体高分子型燃料電池」の普及、促進を後押しするとして期待されている。
この研究の反響は大きかった。白金単原子で水素を酸化させることができると、世界で初めて実証したからだ。海外の専門誌にも取り上げられ、評価されている。

環境調和型の触媒開発

今進めているテーマに、人工光合成の反応に関する研究がある。「燃料電池の触媒の研究は、化学エネルギーを電気エネルギーに変換するところを扱っていますが、人工光合成の研究は、光エネルギーを化学エネルギーに変換する部分の研究です」。そこで重要なのは、太陽エネルギーを環境に調和する形でいかに生かしていくか、だと考えている。
「環境調和という面から考えると、稀少な貴金属を消耗しないようにしつつ、かつ耐久性のあるものにしなければならない。そこでコバルト、ニッケルなど安価な金属材料で触媒反応ができないかと考えています」
また実用する場面を想定した際に、実際問題として、生成物は太陽光の下で機能しなければならない。「太陽光は、レーザー光のような強い光ではなく、弱く変動する光。その下でも安定的に反応が進行する触媒の研究を進めています」

自然界への畏敬の念

太陽エネルギー化学研究センターでは、化学系の研究者と生物系の研究者が同じ建物のなかで研究している。そのメリットを聞くと「生物がもっている人工物では考えられない機能について、深い知見が得られることです。化学にない考え方を知って、研究の出口を見出すこともあります」。生物分野から刺激を受け、物の見方や知識が広がることが多いという。
神谷准教授の実家は、農業を営んでいる。「日光がよく当たる場所と当たらない場所では稲の育ち方は全く違う。子どもの頃に普段接していた景色から、太陽の光エネルギーのすごさを直感的に理解していたと思います。生物は自己増殖、自己修復する。そこがすごいところですね」

●神谷和秀(かみや かずひで)
2013年東京大学大学院工学系研究科、博士(工学)。同年、東京大学大学院同研究科助教を経て、16年より大阪大学太陽エネルギー化学研究センター助教。18年4月より現職。

(2018年2月取材)

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