2018年7月12日

血管透過性制御に関わるタンパク質を明らかに

岡田准教授は、血管だけに存在するタンパク質「Robo4」に注目して研究している。Roboは細胞内にシグナルを伝達する受容体で、4種類ある。「Robo1からRobo3までは脳内の神経細胞で機能しています。ところがRobo4は神経細胞でなく血管だけに存在していることが明らかになり、Robo4は血管で一体何をしているのだろう?と不思議に思う気持ちから、研究を始めました」
岡田准教授は、Robo4を持たないマウスが炎症に弱いことを明らかにした。「Robo4を持たないマウスに細菌成分を投与すると、通常のマウスより高い確率で死にました。Robo4を持たないマウスは、炎症の際に血管の透過性が上がり過ぎ、肺など複数の臓器で血管から血液が漏れてしまうことが原因でした」。このことから、Robo4は炎症時の血管透過性を抑える働きをすることが判明。「血管の透過性が亢進しすぎて起こる炎症性疾患を、Robo4が抑える作用を持つという、とても興味深い結果でした」

新しい仕組みで作用する炎症治療薬の提案

けがなどで病原体が体内に入ると、血管の内側をおおう血管内皮細胞に病原体が触れる。すると血管内皮細胞は免疫細胞とともに、炎症性サイトカインを放出する。このサイトカインは通常、血管透過性を高め病原体の効率的な除去を助けるが、敗血症など重症感染症では、延々と続く炎症のためサイトカイン濃度がどんどん高まってしまう「サイトカインストーム」という状態になる。「サイトカインストームは全身の血管の透過性を上げすぎてしまい、臓器不全などを招いて患者を死亡させてしまいます」。これまで、重症感染症の治療にはサイトカインストームを抑制する目的で、抗生物質やステロイドが用いられてきた。これらの薬は有用なものの、血管透過性を直接抑制することができない。そこで、岡田准教授たちは、血管透過性を抑制する新しい仕組みで作用する炎症治療薬として、血管のRobo4量を増やす薬を開発中だ。

Robo4に着目した創薬の実現へ

「Robo4はなぜ血管透過性を抑えるのか?」についてのメカニズム研究も進んでいる。最近の研究では、Robo4が敗血症以外の広い炎症疾患の治療標的となることも明らかにしている。「Robo4の機能の全容を解明し、安全性についての情報も得つつ、『阪大発の創薬』を実現させていきたいです」

脳の血管透過性コントロールにも挑戦

他にも、脳疾患を効率よく治療する技術についての共同研究が進行中だ。「脳の血管は透過性がとても低い。血液脳関門という、血管内の異物を脳に入れない仕組みがあるのです。脳を守る大事な仕組みですが、血液中の薬が脳に届かず、脳疾患を効率よく治療できないことが問題になっています。我々は、脳の血管透過性を一時的に高め、効率よく脳に薬を届ける技術の開発も進めています。」

●岡田欣晃(おかだ よしあき)
2003年大阪大学薬学研究科修了、薬学博士。同年ハーバード大学医学部研究員、06年大阪大学薬学研究科助手、07年同研究科助教を経て、12年より現職。

(2018年2月取材)

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