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ミクロの世界が見える電子顕微鏡に魅かれ 極限環境下での物性の解明に挑む

超高圧電子顕微鏡センター・助教・小林 慶太

ミクロの世界が見える電子顕微鏡に魅かれ 極限環境下での物性の解明に挑む

ミクロの世界が見える電子顕微鏡に魅かれ 極限環境下での物性の解明に挑む

小林慶太助教は電子顕微鏡を用いてさまざまなナノ物質に関する研究を進めている。小林助教が電子顕微鏡に出会ったのは、大学4年のころ。材料の構造が「具体的な形までキレイに見える」ことに強い印象を受けた。

現在の主な研究テーマは、極限環境下での物質の物性。真空や低温、カーボンナノチューブの中など、普通でない(極限)状態での物性を調べる。「たとえば、氷の結晶は一般には雪の結晶のように六角形ですが、特定の条件下では様々な異なる構造に変化する。低圧・極低温という宇宙空間を模した環境で観察すると、強誘電性を示す結晶が得られました。これまで、重力の関与だけでは解き明かせなかった惑星の生成に、強誘電体としての氷の関わりを示唆するものです」という。

電子顕微鏡の魅力は「ミクロの世界がはっきりと目に見えること。ただ、マクロな観点では満足できたかに思える材料が、電子顕微鏡で見ると、実は失敗していたり……。厳しい現実をつきつけられます」という。それでもどうせなら、きれいな画像を撮るのが望みだと笑う。

やりはじめると仕事も趣味も、とことん打ち込む性格。ベンチプレスでは150kgを持ち上げるという。また、「気になるものは集めたくなる」と、研究室にはカプセル自動販売機で集めたマグネットがしっかり「展示」されている。

同センター赴任をきっかけに研究の方向性が大きく変化。「つくりだした材料を電子顕微鏡で分析、検討するという方向から、電子顕微鏡で材料の物性そのものを研究するという方向に転換した」という。「今後はこの二つの方向性を統合し、物性研究の知見を生かした材料開発を手掛けていきたい」と夢を描く。

●小林慶太(こばやし けいた)

2004年三重大学工学部卒業。同工学研究科修士課程、名古屋大学理学研究科博士課程修了。博士(理学)。産業技術総合研究所特別研究員などを経て、12年大阪大学超高圧電子顕微鏡センター助教。帝人賞(08年)、日本金属学会奨励賞(14年)を受賞。透過型電子顕微鏡法による多様なナノ物質に関する研究を進めている。



(本記事の内容は、2015年9月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)