生命科学・医学系

2017年12月19日

研究成果のポイント

・アンドロイドロボットを用いて運動に関わる脳の機能を解明
・パーキンソン病で電気刺激治療を行う視床下核という微小な大脳深部の領域がアンドロイドの僅かなぎこちなさを敏感に検知することを発見
・パーキンソン病の病態解明や親和的なヒト型ロボットの研究開発に貢献する発見

概要

大阪大学国際医工情報センターの平田雅之寄附研究部門教授らの研究グループは、アンドロイドロボットを用いて、動きが少しでもぎこちないと、大脳の深部にある視床下核という小さな部位が敏感に検知することを世界で初めて明らかにしましました。

平田教授らは、人にそっくりなアンドロイドロボットが微笑んでうなずくしぐさを観察した時の脳活動を、機能的MRIを用いて調べました。それを、そのロボットのモデルになった人が同じしぐさをした場合の脳活動と比較したところ、視床下核という大脳深部の微小な部位の活動が強いことが分かりました。アンドロイドと人の違いは、静止画では区別がつきにくいですが、動画では人に比べてアンドロイドはわずかに動きがガクガクぎこちないものでした。この結果から、アンドロイドの僅かにぎこちない不自然な動きをみるだけで、大脳の深部にある視床下核という僅か数ミリの小さな部位がそれを敏感に検知することが明らかとなりました。(図1図2

今回の研究では、パーキンソン病の治療のために電気刺激する僅か数ミリの視床下核という脳領域が、アンドロイドロボットの少しだけぎこちない動きを敏感に検知していることが分かりました。本研究成果により、パーキンソン病の病態解明や、親和的なロボット開発への貢献が期待されます。

本研究成果は、英国科学誌「Scientific Reports」に、12月19日(火)19時(日本時間)に公開されました。

図1 アンドロイドの動画

図2 視床下核の反応

研究の背景

親しみやすいヒト型ロボットの研究が進んでいます。例えば大阪大学の石黒浩教授が開発したアンドロイドと呼ばれるロボットは人にそっくりな外観と動きをします。しかし、しばらく眺めていると本当のヒトではなくてロボットであることに気が付いてギョッとすることが知られています。「不気味の谷」と呼ばれる現象です。

平田教授らの研究グループでは、この現象を引き起こす背景にある脳活動の解明を試みました。

本研究の成果

平田教授らは、健常被検者14名に対して、人にそっくりなアンドロイドロボットが微笑んでうなずくしぐさの動画を見た時の脳活動を、機能的MRIを用いて調べました(図1)。その際、アンドロイドの動画と、そのモデルになった人の動画を見せて脳活動の違いを比較しました。その結果、アンドロイドの動画を見たときは人の動画を見た時に比較して、視床下核という大脳深部の微小な部位の活動が強いことが分かりました(図2)。アンドロイドと人の違いは静止画では区別がつきにくいですが、動画ではアンドロイドはわずかにうなずく動きがガクガクぎこちなく、表情も控えめでした。この結果から、アンドロイドの僅かにぎこちない不自然な動きをみるだけで、大脳の深部にある視床下核という僅か数ミリの小さな部位がそれを敏感に検知することが明らかとなりました。

視床下核は、錐体外路と呼ばれる運動に関与する脳のネットワークの一部であり、スムーズな動きの実現に重要な役割を担っています。パーキンソン病の治療では、この視床下核を電気刺激することにより、手足のふるえなどの不随意運動を劇的に改善する深部電気刺激療法(deep brain stimulation)が、確立されています。今回の発見は、人の運動に関する神経ネットワークの解明に貢献し、パーキンソン病の病態解明において重要な知見であるだけでなく、さらに親しみやすいヒト型ロボットの研究開発に貢献する知見です。

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

パーキンソン病では錐体外路の異常により手足のふるえ、ギクシャクした動きや無表情になるといった症状がでてきます。これはアンドロイドの動きと似ている面があり、今回の視床下核がぎこちない動きを検知するという発見は、視床下核の機能に関する新たな発見であるとともに、パーキンソン病をはじめとする不随意運動疾患の病態解明にも役立つ成果と言えます。

また今回の結果からはアンドロイドは動きがよりスムーズであることが重要であることが示唆されます。これは親しみやすいヒト型ロボットを実現するための重要な知見と言えます。

特記事項

本研究成果は、2017年12月19日(火)10時(ロンドン)〔12月19日(火)19時(日本時間)〕に英国科学誌「Scientific Reports」(オンライン)に掲載されました。
タイトル:“Subthalamic nucleus detects unnatural android movement”
著者名:Takashi Ikeda1,2, Masayuki Hirata2,3,4, Masashi Kasaki5,6, Maryam Alimardani5,7, Kojiro Matsushita2,8,Tomoyuki Yamamoto4, Shuichi Nishio9, Hiroshi Ishiguro4,5,9
1 Research Center for Child Mental Development, Kanazawa University, Kanazawa, Japan
2 Endowed Research Department of Clinical Neuroengineering, Global Center for Medical Engineering and Informatics, Osaka University, Suita,Japan
3 Department of Neurosurgery, Osaka University Medical School, Suita, Japan
4 Center for Information and Neural Networks (CiNet), National Institute of Information and Communications Technology, and Osaka University,Suita, Japan
5 Graduate School of Engineering Science, Osaka University, Toyonaka, Japan
6 Institute of Liberal Arts and Sciences, Nagoya University, Nagoya, Japan
7 Graduate School of Arts and Sciences, The University of Tokyo, Tokyo, Japan
8 Graduate School of Engineering, Gifu University, Gifu, Japan
9 Advanced Telecommunications Research Institute International, Kyoto, Japan

なお、本研究は、内閣府 革新的研究開発推進プログラム(ImPACT)により、科学技術振興機構を通して委託されたものです。

参考URL

大阪大学 国際医工情報センター 臨床神経医工学寄附研究部門
http://www.cne-osaka.org/

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