人々がマジックにだまされる謎を科学的に初めて実証

人々がマジックにだまされる謎を科学的に初めて実証

手品の仕掛け(トリック)は、観客の瞬きにあった!

2016-4-4

本研究成果のポイント

・観客の注意が緩み、瞬きが揃った瞬間に、マジシャンは手品の仕掛けをしていることを初めて科学的に実証
・近赤外光カメラで検出した結果、手品を見ている観客の瞬きのタイミングは同期していることを発見
・瞬きが同期するタイミングを利用した魅力的な映像コンテンツの開発や評価につながることに期待

概要

大阪大学大学院生命機能研究科ダイナミックブレインネットワーク研究室 中野珠実 准教授は、英国ハートフォードシャー大学の心理学者で、著名なマジシャンでもあるリチャード・ワイズマン博士との共同研究で、マジックショーを見ている人々の瞬きが揃って生じているときに、マジシャンは手品の仕掛けをしていることを明らかにしました。本研究により、マジシャンは観客の瞬きのタイミングを上手く操作することで、観客の注意が緩んだ瞬間に、つぎの手品の仕掛けを準備していることが初めて科学的に実証されました。

本研究成果をもとに、映像観察時における観客の瞬きが同期するタイミングを調べることで、より魅力的な映像の開発や、映像に対する関心度の評価などに応用されることが期待されます。

本研究成果は、2016年4月4日(月)午後4時(日本時間) に米国科学誌電子版「PeerJ」に掲載されました。

研究の背景

なぜマジックに人々はだまされてしまうのでしょうか。マジシャンは、言葉や動作による誘導や視覚・音響効果などを巧みに駆使することで、観客の注意を他の場所にそらす「ミスダイレクション」という方法を用いて手品を仕掛けていることがよく知られています。これまでの中野准教授らの研究により、映像の暗黙の切れ目で観客の瞬きが揃って生じること、さらに瞬きに伴い、外界への注意を司る脳領域の活動が一過性に減少していたことから、観客の瞬きが一斉にそろって発生しているときは、観客のマジックへの注意が一瞬緩んでいることがわかっています。

本研究では、「注意の緩み」がマジックの仕掛けに利用されているのではないか、という仮説のもと、マジックショーを見ている人々の瞬きがどんなときに生じているかを調べました。

研究の成果

実験では、大阪大学の学生や教職員20名に、アメリカの著名なマジシャンが様々な場所からコインを取り出す2分間のマジックショーを見てもらい、その時の自然に生じた瞬きのタイミングを近赤外光カメラにより検出しました。その結果、マジックショーを見ている観客の瞬きは、0.15秒の時間幅で互いに同期したタイミングで生じていることが明らかになりました。さらに、マジシャンの手の中からコインが次々に現れるマジックを見ている最中は観客の瞬きは抑制され、そのマジック終了直後に観客の瞬きの同期が高まったタイミングで、マジシャンは次のマジックの仕掛けのための行動をしていることがわかりました。

このことから、マジシャンは、観客の注意の緩急のタイミングを上手に利用することで、手品の種を仕掛けていることが初めて科学的に実証されました。

実験の様子

本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)

映像観察時の観客の瞬きの同期度を調べることで、映像に対する観客の注意の向け方が揃っているかどうかを推定することが可能になることから、より魅力的な映像の開発や、映像に対する関心度の評価などに応用されることが期待されます。

特記事項

本研究成果は、2016年4月4日(月)午後4時(日本時間) に米国科学誌電子版「PeerJ」に掲載されました。
タイトル:Blink and you’ll miss it: the role of blinking in the perception of magic tricks
雑誌:PeerJ
著者名:リチャード・ワイズマン、中野珠実

参考URL

大阪大学大学院生命機能研究科 ダイナミックブレインネットワーク研究室
http://www.fbs.osaka-u.ac.jp/jpn/general/lab/181/

用語説明