指先の毛細血管画像の数値化に成功
客観的根拠に基づいた生活習慣病予防法の開発・早期診断につながる技術
本研究成果のポイント
・非侵襲で取得した不鮮明な指先の毛細血管画像を鮮明に抽出し、数値化することに成功
・これまでは人が計測することで5分程度時間を要したが、本システムでは5秒で計測可能となった。
・客観的・科学的根拠に基づいた生活習慣病等予防法の開発・早期診断につながる技術の開発に期待
リリース概要
大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻の河口直正准教授と中根和昭招へい准教授は、大阪市イノベーション創出支援補助金を受け、あっと社と共同研究を行い、非侵襲(皮膚・または体の開口部への器具の挿入を必要としない手技)の皮下毛細血管画像から毛細血管のみの画像を鮮明に抽出することで、毛細血管の長さ・太さ・面積を自動計測によって数値化することに成功しました。また、そのコア技術を搭載した毛細血管画像数値化システム“Capillary Analysis System”(CAS)の開発に至り、2015年12月、あっと社より毛細血管画像の受託解析サービスがメディカル・ヘルスケア分野の研究者向けにリリースされました。本システムにより、これまで数値化に5分程度要したところ、5秒で計測できるようになりました。
本研究成果によって、客観的・科学的根拠に基づいた生活習慣病等予防法の開発・早期診断につながる技術の開発が期待されます。また、このような機器が、将来的に薬局やフィットネスクラブなどへ提供され、市民が客観的に健康状態を測定できるようになれば、健康意識の向上に繋がることが期待されます。
毛細血管観察装置
指先にオイルを塗り、スコープ下に置くだけで毛細血管が観察できる
研究の背景
これまで指爪床部毛細血管の観察は目視により行われ、画像データで記録したものを半自動的に計測する手法が一部で使われておりました。しかし、客観的な数理指標に基づく評価はいまだ行われておりません。これは毛細血管観察装置によって得られる画像が不鮮明である場合が多く、明確に血管の境界を抽出できない事にも起因します。毛細血管がヘアピン状であることが正常な状態だとする研究は国内外で発表されていますが、疾病との相関を示しているものは1990年代になり、強皮症・慢性関節リウマチなど膠原病に関するデータ以外において多くありません。
そこで、本研究ではあっと社との共同研究で、生体内の画像に対して反応拡散方程式という数理的手法を用いることにより毛細血管画像の血管部分のみを抽出することができました (下図) 。
通常の二値化法での血管抽出と共同研究成果である反応拡散方程式を用いた毛細血管画像の血管部分のみが抽出できた画像例
当該技術により数値化が簡易的にできることでこれらの研究が進み、未だ解明されていない抹消の毛細血管と生体機能や疾病との関係が解明されていくことになります。
本研究成果が社会に与える影響(本研究成果の意義)
医療費の増加から予防分野の必要性が言われながらも、自らへの健康に対する効果的な意識付けが難しい現状です。これらの機器が将来的に医療機関・健診機関のみならず、薬局やフィットネスクラブなどへ提供され、ライフイノベーション分野でもとめられる、客観的(科学的)根拠に基づいた生活習慣病等予防法の開発・早期診断につながる技術の開発が期待できます。また、産学連携や地域の中小企業とのコンソーシアムを形成してのヘルスケアの新分野への取組は、他の企業のモデルとなるとともに国の成長戦略である健康産業の活性化と質の高いヘルスケアサービスの提供に寄与することになります。
特記事項
本研究成果は、2015年8月、日本未病システム学会雑誌 Vol.21, No.2,pp.98-102,2015に掲載されました。 また、本研究は、大阪市イノベーション創出支援補助金を受けて実施しました。
参考URL
大阪大学大学院医学系研究科保健学専攻HP
http://sahswww.med.osaka-u.ac.jp/www/home.html