Research Subtitle:
電子スピンがもつれながら揺らぐ機構の解明に期待

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Announcement Date
2026-01-19

Research Highlight
natural_sciences

Term Index
{'items': [{'key': 'gm88', 'term': '電子の量子スピン', 'description': {'blocks': [{'key': 'eg1fs', 'text': '電子はスピンと呼ばれる角運動量を持ちます。量子スピンは角運動量の大きさが最も小さい状態です。古典的に自転運動にたとえられる事も多いですが、正確には、量子力学によって理解される電子の性質です。', 'type': 'unstyled', 'depth': 0, 'inlineStyleRanges': [], 'entityRanges': [], 'data': {}}], 'entityMap': {}}}, {'key': 'cbo6r', 'term': '熱力学第3法則', 'description': {'blocks': [{'key': '7nh17', 'text': '物質は様々な状態になりえますが、そのミクロな状態の数はエントロピーという量で表されます。エントロピーは系の乱雑さの度合いであるとも言われます。熱力学第3法則は、通常、物質には最も低いエネルギーを持つ基底状態が唯一存在し、絶対零度になっていく過程で、その基底状態に近づきエントロピーもゼロになっていくことを示唆しています。ただし、乱れがあったり秩序が生じなかったりする場合は、その限りではありません。この法則は、ノーベル賞物理学者のウォルター・ネルンストらによって見出されました。', 'type': 'unstyled', 'depth': 0, 'inlineStyleRanges': [], 'entityRanges': [], 'data': {}}], 'entityMap': {}}}, {'key': '4sc6i', 'term': 'フラストレーション ', 'description': {'blocks': [{'key': '1ucdu', 'text': '気体分子を冷却すると、液体の状態を経て、固体の結晶になっていく事がよく知られています。高温で分子の位置が乱れていても、温度を下げると、分子間の引力的な相互作用エネルギーが低くなるように、分子は規則的な安定配置を取る傾向にあります。しかし、分子間の全ての相互作用エネルギーを同時に低くできない状況では、温度を下げても分子は安定な状態を取ることができず、揺らいだ状態になります。このように分子間の全ての相互作用のエネルギーを同時に小さくすることができず、エネルギーが低い状態が数多く存在することをフラストレーションと呼びます。ノーベル賞化学者のライナス・ポーリングらによって指摘されましたが、分子に限らず、原子や電子などあらゆるものに共通した概念です。男女の三角関係にたとえて考えると分かりやすいかもしれません。なお、電子スピン間の相互作用にフラストレーションをもたらすような格子の事を、フラストレート格子と呼びます。イタリアのジョルジオ・パリージはこの分野の研究で2021年のノーベル物理学賞を受賞しています。', 'type': 'unstyled', 'depth': 0, 'inlineStyleRanges': [], 'entityRanges': [], 'data': {}}], 'entityMap': {}}}, {'key': 'bt5q8', 'term': 'スピネル型酸化物', 'description': {'blocks': [{'key': '65l8a', 'text': '化学式がAB2O4で表される物質で、Aにはアルカリ土類金属原子、Bには遷移金属原子が入る傾向があります。竹で編まれた籠目状の格子(図1(b)の灰色の破線)はよく知られていますが、スピネル型酸化物におけるBの原子が作る格子は、籠目状の格子が3次元的に組まれた格子(パイロクロア格子)になっており、このパイロクロア格子もフラストレート格子のひとつです。なお、氷において隣接した酸素原子の間の中点で結んだ格子もパイロクロア格子になっており、氷の構造とも共通する点があります。', 'type': 'unstyled', 'depth': 0, 'inlineStyleRanges': [], 'entityRanges': [], 'data': {}}], 'entityMap': {}}}, {'key': 'e9c0v', 'term': 'ランダム・シングレット状態', 'description': {'blocks': [{'key': 'c8gkq', 'text': '物質内の原子がフラストレート格子を組み、各原子にある量子スピンの間に、スピンの向きを互いに逆に向けさせようとする相互作用(反強磁性的相互作用)があると、低温になっても安定なスピン秩序を形成することができず、スピンがいつまでも揺らいでいる状態が期待されます。特に、フラストレート格子を組む物質において、原子の位置や種類に乱れがあると、ランダム・シングレット状態が生じることが期待されます。この状態では、隣接する量子スピンが非磁性の電子対を作り、他の電子対と共鳴を起こしたり、孤立したスピンが物質中をさまよったりしている状態が理論的に予想されていました。この状態は大阪大学大学院理学研究科の川村光名誉教授によって提案されました。', 'type': 'unstyled', 'depth': 0, 'inlineStyleRanges': [], 'entityRanges': [], 'data': {}}], 'entityMap': {}}}, {'key': 'feasg', 'term': '比熱測定', 'description': {'blocks': [{'key': '9r7pq', 'text': '物質の温度を上げるに必要な熱量を調べる測定です。この比熱測定によってエントロピーが温度でどのように変化するか分かり、物質が持つ内部自由度に関する情報が得られます。本研究では、スピンが極低温まで凍りつかず、スピンが揺らげるだけの自由度を保持している事を比熱測定によって明らかにしました。', 'type': 'unstyled', 'depth': 0, 'inlineStyleRanges': [], 'entityRanges': [], 'data': {}}], 'entityMap': {}}}, {'key': '92nu6', 'term': '核磁気共鳴測定', 'description': {'blocks': [{'key': '2l3q5', 'text': '電子だけでなく、原子核もスピンを持っています。磁場をかけると、磁場と同じ向きの原子核スピンと、逆向きの原子核スピンの間に、エネルギーに差が生じます。このエネルギー差に相当する電磁波を物質に加えることで、原子核のスピンが感じているミクロな(内部)磁場の情報を得ることができます。本研究では、物質中で電子が非磁性の対を作っていることや、孤立スピンが存在していることを明らかにするのに用いられました。なお、病院で用いられるMRI(磁気共鳴画像法)も、この核磁気共鳴測定と同じ原理に基づいています。', 'type': 'unstyled', 'depth': 0, 'inlineStyleRanges': [], 'entityRanges': [], 'data': {}}], 'entityMap': {}}}, {'key': 'a7lqi', 'term': 'ミュオン・スピン緩和測定', 'description': {'blocks': [{'key': 'fonja', 'text': 'ミュオンは、素粒子物理学の標準模型で“第二世代の電子”に相当する粒子です。その質量が電子より200倍ほど重いのですが、電子と同様に、スピンと電荷を持ちます。正電荷のミュオンが物質に入射されると、物質内部で生じている(内部)磁場によってミュオン・スピンがその向きを変えるため、物質中の(内部)磁場の分布や揺らぎを調べることができます。国内では、大強度陽子加速器施設(J-PARC)と大阪大学核物理研究センターで実験を行うことができます。本研究では、物質中で孤立した電子スピンが作る(内部)磁場の揺らぎを測定しました。', 'type': 'unstyled', 'depth': 0, 'inlineStyleRanges': [], 'entityRanges': [], 'data': {}}], 'entityMap': {}}}, {'key': 'a913r', 'term': '中性子PDF解析', 'description': {'blocks': [{'key': 'd0hlj', 'text': '中性子は、陽子とともに原子核を形作る粒子です。中性子を結晶に入射すると、中性子が結晶中の原子によって散乱されて、この散乱波が特定の方向で強めあう現象が起きます。これは中性子回折と呼ばれますが、この回折波をフーリエ変換することで、結晶中における2つの原子間の相対位置に関する情報(原子対相関関数、PDF)が得られます。この実験法は、原子が乱れなく並んでいる結晶だけでなく、原子の並びに乱れがある物質でも適用することができます。本研究では、チタン原子の並びが氷のように乱れていることを調べるのに用いられました。国内では、J-PARCで実験を行うことができます。', 'type': 'unstyled', 'depth': 0, 'inlineStyleRanges': [], 'entityRanges': [], 'data': {}}], 'entityMap': {}}}]}

Departments
['sci']

Related Teachers
['花咲徳亮']

Teacher Comment
極めて低い温度まで電子スピンが揺らいだ状態になるには、原子の並び方に乱れがないことが必要だと、これまで考えられてきました。本研究では、従来の常識とは異なり、原子の並びを乱すことによって、極めて低い温度まで電子スピンが揺らいでいる状態を観測することができました。発見した当時、得られた結果が当時の常識とはかけ離れたものだったので、なかなか理解してもらえませんでした。

Teacher Image
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/image/photo_drwan_640.png

Teacher Name
花咲 徳亮

Teacher Position
教授

Teacher Division1
理学研究科

Teacher Division2

Teacher URL
https://rd.iai.osaka-u.ac.jp/ja/60bc080048f7bf54.html