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共創イノベーションへの挑戦

共創機構産学共創本部

「共創」を掲げる大阪大学は、 産学連携の分野で産業界や地域と手を携え 共創イノベーションを目指す新たな取り組みの第一歩を踏み出した。 これまでの課題を克服し、近未来の社会課題解決と 社会実装を通じた経済的インパクトの創出を図る取り組みは、 産業界からの注目も高まりつつある。

共創イノベーションへの挑戦

『共創(Co-creation)』する大学への変革

これまで大阪大学は「Industry on Campus」を掲げ、常に新しい産学連携モデルをつくってきた。そして、社会における活動主体が多様化し、それぞれが担う役割が重層的になってきた今、産業界と大学が共に何を目指すか、何が課題になっているかを考え、新しい知を創り出す、すなわち『共創(Co-creation)』する大学へと変革を遂げようとしている。その一環として、「産学連携」を「産学共創」へとパラダイムシフトすべく、大阪大学は今年4月に産学連携本部を「産学共創本部」へと改組した。

「産学共創本部」は、4つの部門から成る。企業との共同研究創出等を支援する「イノベーション共創部門」、知的財産の権利化・ライセンス化等を担う「テクノロジー・トランスファー部門」、イノベーション人材の育成等に取り組む「共創人材育成部門」、ベンチャー起業支援等を担う「出資事業推進部門」だ。

このうち『共創(Co-creation)』と最も関わりが深い「イノベーション共創部門」は、組織連携を重視した次のような取り組みにより、「共創イノベーション」を目指す。

プラットフォーム技術をベースに複数企業が参画する取り組み

大阪大学で生まれた、様々な用途に応用できる革新的技術(いわゆる「プラットフォーム技術」)を最大限社会に役立てるためには、複数の企業と契約し、複数の用途での事業化を図ることが望ましいが、従来は企業1社との協働に留まるケースが多かった。

こうした課題を解決するために、複数の企業と特定用途ごとに契約することで、事業領域を切り分け、複数企業が共同研究に参画する「協働ユニット制度 」を取り入れた。協働ユニットにおいて、プラットフォーム技術を活用した新たな研究開発・人材育成・機器利用促進を行う。

具体的な事例としては、2017年3月に大阪大学生命機能研究科に設置した「MRI協働ユニット」の取り組みがある。超高解像度の動物MRI撮像装置を用いて、MRIの創薬研究への応用を図るべく、現在、異なる研究テーマで製薬企業3社と大阪大学の研究者3名がそれぞれ参画している。今後は、新規の参画企業を募るとともに、創薬コストの削減、動物・ヒトMRI研究人口の拡大、ならびに新研究領域・新事業創出に挑戦していく予定だ。

このような複数企業が参画する取り組みでは、各社から資金を集めて使用することができるため、従来よりも大規模な共同研究が可能となり、より大きな研究成果が期待できる。加えて、技術者を雇用するための人件費が確保できるというメリットも大きい。

※協働ユニット制度 ……大阪大学が他に先駆けて設置した制度で、ひとつのプラットフォーム技術に対し、異なる研究テーマで、企業ニーズに応じた研究活動を行うもの。複数企業からの資金を集めることで、単独では困難な高度な共通課題の検討、コストや時間のかかる研究活動、先進的機器の協働利用などを行い、産業界に成果を還元するしくみ。

バリューチェーン構築を念頭に複数の研究者や複数企業の参画を募る取り組み

一方で、個別の研究シーズと個別のメーカーのニーズをマッチングして共同研究等を行う場合、メーカーがユーザーのニーズを十分に把握できておらず、実用化した製品・サービスが普及しないという問題もあった。

そこで、イノベーション共創部門では、製品化後のバリューチェーン構築を念頭に、研究開発の初期段階から、研究者及びメーカーと販売会社が密に連携することにより、研究者が持つニーズ(感覚)と、販売会社が蓄積してきた顧客ニーズ(情報)間のズレを早期に修正し、「真のニーズ」に応える強力なチームの組成にも力を入れる。

具体的な事例としては、大阪大学国際医工情報センターの次世代内視鏡治療学共同研究部門(通称:「プロジェクトENGINE」)の取り組みがある。プロジェクトENGINEでは、医師の「臨床ニーズ」と販売会社の「顧客ニーズ」をすりあわせた「真のニーズ」をもとに、「血液吸引と凝固止血を1本で可能とする新しい外科手術用電気メスプローブ」の共同開発に成功、臨床現場で高い支持を得ている。

近未来の社会課題解決や新たな価値創出に資する全学的・学際的な取り組み

これまでの産学連携は理工系・医歯薬学系の研究による取り組みが中心だった。そこで今後は、文化・芸術・芸能・くらし・まちづくり・スポーツ・健康・経営など、人文社会系の研究が理工系・医歯薬学系の研究と相乗効果を発揮できる分野も含めて、近未来の社会課題解決や新たな価値創出を目指す。

こうした取り組みを効果的に推進するため、産学共創本部では2017年7月、通称「共創イノベーションプラットフォーム」という仕組みを立ち上げた。「共創イノベーションプラットフォーム」は、どのステージからでも利用開始・終了できる3つのステージから成る。「未来共創思考サロン」、「共創テーマ探索チーム」、「共創テーマ研究ユニット」だ。

ステージⅠ「未来共創思考サロン」では、産官学民の多様な人材と大阪大学の研究者が、未来社会のあるべき姿と新たな価値についてオープンな場で議論・デザインし、社会に提案・発信していくワークショップ等を企画・運営する。

ステージⅡ「共創テーマ探索チーム」では、ステージⅠを通じて描かれた魅力ある未来社会の実現に向けて関与したいメンバーや、自らのアイデアをもとに社会価値創造に挑戦しようとするメンバーが集って調査・検討を行い、参画メンバーを絞り込みながら、研究テーマを定めプロジェクトを立ち上げる。

ステージⅢ「共創テーマ研究ユニット」では、公募を通じて提案される共同研究プラン、およびステージⅡで組成された共創テーマ探索チームを、大型共同研究契約や大型公的資金事業への採択につなげるための企画・コーディネーションを行う。

社会的にも経済的にもインパクトの大きい新規事業の創出へ

大阪大学産学共創本部は、大阪大学における領域の異なる複数の優れた研究者とイノベーションを目指す企業とのマッチングをはじめ、産官学民における各参画者の強みを活かした様々なコーディネーションを行うことで、社会的にも経済的にもインパクトの大きい新規事業の創出に向けた取り組みを強化していく。大阪大学産学共創本部のWEBサイトや各種のソーシャルメディア等を通じて参画者を募り、その成果についても記事・動画等で随時発信していく予定だ。

産学共創本部の取り組みをもっと知りたいと思ったら……

大阪大学 産学共創本部 イノベーション共創部門
産学共創企画室(担当:加藤)
電話:06-6879-4206
Email:Co-innovation[at]uic.osaka-u.ac.jp ※[at]は@に変更してください。

産官学民の皆様の参加をお待ちしています

(本記事の内容は、2017年10月大阪大学NewsLetterに掲載されたものです)