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医脳理工と企業が緊密に連携し スーパー日本人育成を目指す

子どもから高齢者までの人間力を飛躍的に活性化する

大阪大学センター・オブ・イノベーション(COI)プログラム

「人間力活性化によるスーパー日本人の育成」を掲げた、大阪大学センター・オブ・イノベーション(COI)プログラムがスタートして3年半が経過。「脳」や「免疫力」、「コミュニケーション力」を活性化させる研究により、社会全体の活性化を目指す大阪大学COIでは、医学・脳科学・理学・工学分野の研究者と企業によるunder one roofの緊密な連携が、めざましい成果を生み出し始めている。

医脳理工と企業が緊密に連携し スーパー日本人育成を目指す

10年後の社会のために今すべき研究開発課題を企業と設定

「革新的イノベーション創出プログラム(COI STREAM)」は、10年後のあるべき社会や暮らしの姿を見据えたうえで、10年先を見通した革新的研究課題を抽出し、企業だけでは実現できない革新的なイノベーションを産官学連携により実現しようとする文部科学省のプロジェクト。これまでの「研究から生まれたシーズをもとに実用化を発想する」というアプローチではなく、「10年後の社会のあるべき姿を出発点として、企業と一緒に今すべき研究開発課題を設定する」というアプローチでイノベーションを目指すのがこのプロジェクトの特徴だ。

「脳力」と「免疫力」、「コミュニケーション力」の活性化により 社会全体の活性化を実現するイノベーション拠点

このプロジェクトに参画する大阪大学COIは、全国に18あるCOI拠点のうちのひとつで、「人間力活性化によるスーパー日本人の育成」拠点として、子どもから高齢者までの人間力を飛躍的に活性化させ、その人の持つ潜在力を最大限に発揮させることで、社会全体の活性化を目指している。

大阪大学COI研究推進機構の松本和彦副機構長(研究統括リーダー)は、「日本社会の現状に危機感があり、内向きになっている若者や増加する高齢者を元気にして日本を活性化したいと思った」と語る。そのための手段が、人間の「脳力」と「免疫力」、「コミュニケーション力」の活性化だ。

大阪大学COIの特徴は、「医脳理工連携」、「オープンイノベーション」、「国際産学連携」の3つ。脳科学分野の先端研究環境を有する大阪大学は、これまでの医学系分野と工学系分野の連携に脳科学・理学分野を加えた学内7部局にわたる「医脳理工連携」を掲げる。また、従来は知的財産の関係で研究室と企業が1対1で進めることの多かった産学連携だが、大阪大学COIでは、複数研究室と27企業17機関が連携し、学内特区内では特許権などの知財を互いに無償で共有できる「オープンイノベーション」環境を整えた。加えて、62カ国600社と連携する世界最大のナノテクコンソーシアムとの「国際産学連携」を基盤とし、壮大なチャレンジが続いている。


(大阪大学COIホームページ: http://www.coistream.osaka-u.ac.jp/about/index.html

脳波センサや機能性食品など実用化へつながる研究成果も

「脳の活性化」に関して今最も注目されているのが、脳波計により人のストレス状態を検知し、ストレスフリーの環境を実現しようとする「脳マネジメントシステム」の研究だ。ヘッドホンと一体化した脳波センサを装着し、脳波に基づき装着者の好みに合った音楽を自動作曲する人工知能(AI)の開発に成功し、1月に出展したウェアラブルEXPOでも大きな反響があった。他にも、脳波計測による睡眠の質の改善、うつ病やアルツハイマー型認知症の早期発見などを目指し、脳波を簡便に測定できるウェアラブルのパッチ式脳波センサも開発した。

また、「免疫力の活性化」では、地元自治体とも連携し、免疫システムに大きく関与するとされる腸内フローラに着目した研究が進む。現在、腸内フローラ正常化を促す機能性食品の試作段階だ。

企業と連携し社会実装へ

これまで3年間のフェーズ1で着実に成果をあげてきた大阪大学COIは、現在、フェーズ2として実証実験による脳や免疫力活性化を示すデータ収集の段階に入っているが、COIには研究成果の製品化などが強く求められており、「マッチングできる企業とのさらなる連携を模索していく」と松本副機構長は強い意欲を示している。

(2017年3月取材)