2018年7月17日

「骨がどのように形づくられるか」に興味

「歯は骨に埋まっている状態で、初めて機能します」と波多准教授は語る。「歯が生えてくる時は、あごの中から骨を溶かしながら出てきますし、その後も周りの骨に支えられて機能します。その骨が歯周病などで溶けてなくなってしまうと、歯はもうグラグラで、食事も満足にできません。さらに例を挙げると、矯正治療中の歯は、骨を溶かしてスペースを作りながら移動しています」。歯科医は歯だけを治療しているのではない。「歯科治療の最大の目標は、骨をコントロールすることだ」  骨が形作られるまでには、二つの経緯がある。「一つは『層状に盛り上がっていく』もので、頭の骨などで見られます。もう一つは、『最初に軟骨でおおよその形を作ってから硬い骨に置き換えていく』ものです。指などは、5本の大体の形が初めは軟骨で作られ、その後硬い骨に置き換えられます」
研究を始めた頃は、骨に関心を持っていたが、次第に骨を形づくる軟骨の重要性に気づくようになり、骨や軟骨が形成される過程を遺伝子レベルで研究している。

キーワードは「転写因子」

なかでも、骨や軟骨に重要な転写因子に注目している。転写因子とは、遺伝子が動くか動かないかを決めるもの。その組み合わせによって細胞の種類や働きが決まる。「骨、軟骨がどうやってできるのか、またどのようにして働くかを決めるものは、それぞれ別の転写因子です。骨の元となる間葉系幹細胞から骨の細胞、軟骨の細胞へと分化する時にどんな転写因子が働くのか、そしてどのようにそれが制御されているのかについて研究しています」
骨や軟骨ができるメカニズムを解明し、骨および軟骨疾患の治療法の開発につなげたいという。「高齢化が進む中、軟骨、骨に問題を抱える患者さんは増えていきます。例えば、歯周病で溶けてなくなってしまった患者さんの骨を元に戻す薬、また、歯学の領域ではありませんが、ひざの中に軟骨を形成して膝関節の痛みをなくす薬の開発などにも研究成果を応用したい」

大学院で研究にのめり込む

研究に進んだきっかけは、「実家が歯科医院で、父の後を継ぐ予定で歯学部に入学しました。卒業後は臨床に携わっていたのですが、もう少し勉強がしたくて大学院に入りました」。当時は、歯だけでなく骨にも詳しい「スペシャルな歯科医」をめざしていた。「しかし研究が面白くて、ついのめりこみ、どんどん歯科医から離れていきました。両親は今も実家の歯科医院を継いでほしいと思っています」と笑う。

●波多賢二(はた けんじ)
1998年大阪大学歯学部卒業、2002年同歯学研究科修了、歯学博士。同年大阪大学歯学部附属病院医員、03年日本学術振興会特別研究員(PD)を経て、06年大阪大学歯学研究科助手、07年同研究科助教、10年同研究科講師、13年より現職。

(2018年2月取材)

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