2018年6月26日

原子10、20個の厚みの薄膜デバイス

白土准教授は、自然界では磁性のない物質に磁性をまとわせた新材料を開発している。その手法は、原子10個から20個レベルの厚さの薄膜をつくるナノスケールの高度な技術だ。具体的な薄膜の製造法は二つ。「一つは熱を与えて原子を1個ずつバラバラにして、それをもう一度基盤の上に降り積もらせる方法。もう一つは、ガスをプラズマ化して、スパッタリング(原子を叩き出す)して堆積させる方法です」。この磁性を帯びた薄膜は、メモリや演算素子など、さまざまなデバイスの材料となる可能性を持つ。
「将来的には、今のメモリに取って代わるものを作りたいと考えています」。現在の半導体メモリは立ち上げに時間がかかるが、半導体を磁性材料に置き替えられれば、高速化、高耐久性が実現し、電気供給も不要になる。CPUの磁性材料化も視野に入れている。

磁性材料で電気の制御を

さらに、磁性材料から電気を生み出す研究も進めている。「電圧をかければ磁石にくっつき、磁石を近づければ電圧を発生するような材料があります。酸化クロムCr2O3に磁性をまとわせた材料も、電圧をコントロールする材料の一つ。Cr2O3は、一般的な材料のため、レアメタルのような希少価値の高い物質ではありません。しかし、原子上でバラバラにして、もう一度基盤の上に降り積もらせる方法で薄膜を作るのは難しいのですが、もしこれをデバイスとして用いて利用できるようになれば、電気を生み出すなど多方面で使えるようになります。我々のグループは世界に先駆けてこの研究にトライしました。今ではドイツとアメリカに同様の研究を行うグループがありますが、まだ私たちの技術レベルには届いていません。酸化クロムに限って言えば、地球上でこの研究に取組めるのは私たちだけですね」
また、「現時点では夢物語ですが、将来は、家電製品を磁石で充電するようになり、充電器が不要になるかもしれません。そうなると自動車も磁石を積んでいれば充電不要になるでしょう。世界の景色が一変すると思います」。デバイスの将来にはさまざまな応用可能性が広がっている。

ニーズからの発想

研究を始める際、白土准教授はニーズから考える。「半導体を例にとれば、半導体を使ってこれ以上高速なコンピュータはできないのか。限界が来ているのなら別のデバイスに置き換えられないか、と考えます」。その上で、昔からある材料でデバイスになりそうなものを探す。技術がないなら「自分たちがやってみよう」となる。
失敗も多いが、「失敗することで、別なことを試し、成功につながる要素を広げていくのが研究だと思います。実験のための実験ではなく、本当に実現できることを大切にしています」。

●白土優(しらつち ゆう)
2004年大阪大学工学研究科修了、博士(工学)。同年工学研究科助手、07年同研究科助教、11年講師を経て、13年より現職。

(2018年2月取材)

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