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【お口の相談コーナー】新しくでき上がった入れ歯を入れると痛むのですが

咀嚼補綴科・助教・松田 謙一

【お口の相談コーナー】新しくでき上がった入れ歯を入れると痛むのですが

【お口の相談コーナー】新しくでき上がった入れ歯を入れると痛むのですが

歯学部附属病院
咀嚼補綴科 松田 謙一 助教

長い期間をかけて作った入れ歯がいよいよでき上がり、「これでなんでも食べられる!」と期待して家で食事をしてみると、歯ぐきに痛みを感じることがよくあります。「先生が型取りを失敗した?」、「歯科技工士さんが何かミスをしたのでは?」きっと患者さんは、いろいろと心配になると思います。でも、入れ歯の完成後、少なくとも何回か調整がすむまでは、痛みがでてもご心配には及びません。実は多くの場合、入れ歯を使ってしばらくの間は、どこかに痛みを感じやすいものなのです。

それはなぜでしょうか?皆さんもご存知のように、入れ歯は歯ぐきに支えられて機能します。歯ぐきの部分は弾性があり、軟らかいのですが、入れ歯を作るために使用する石膏模型はとても硬いので、実際の歯ぐきとは違います。したがって、どれだけていねいに入れ歯を作ったとしても、実際に使ってみると、歯ぐきに義歯が沈み込んで、大きな力がかかった部分に痛みが出やすくなり、その部分に潰瘍と言われる傷ができることがあります。でも、その傷はわれわれ歯科医師にとっては非常に大切な情報の一つなのです。傷に当たっている部分を調整することで、徐々に患者さんに合わせていくことができるからです。そのため、多少痛みを感じたとしても、少なくとも来院される2日前には新しい義歯を使って食事をし、痛む場所がはっきりと分かるようにしていただくことが大切です。そうして調整がすむまであきらめずに通院していただければ、きっと痛みなく、快適に食事ができるようになると思います。

(2017年7月「大阪大学歯学部附属病院広報誌 NewsLetter vol.12」より)

https://hospital.dent.osaka-u.ac.jp/hospital/hospital_000430.html


新しい入れ歯でできた傷は、調整のためには大切な情報の一つです。

(2017年7月取材)